2013年9月20日金曜日

現役大学生がMOOCを使ってみて2

現役大学生がMOOCを使ってみて1の続き

MOOC配信サイト
大学レベルとなるとCoursera、edX、Udacityが有名どころです。小中高生向けのKhan Academyというのもあります。

Coursera
スタンフォード大学の教授が2012年4月に始めたもので現在の受講者数480万人、参加大学87とかなりデカイです。講義も科学、法律、芸術、音楽・・・と多岐にわたり、全部で400以上の講義があります。今年の9月から東大の授業も始まりました。

edX
MIT、ハーバード大学が2012年5月から始めたもので現在の参加大学は28です。講義数は72。来年の春から京大の授業が始まります。

Udacity
元スタンフォード大学教授Sebastian Thrun氏が2012年2月から始めたもの。州立大学の講義もありますが基本的にはUdacityオリジナルの講義が多いです。講義数28でコンピューターサイエンスに偏ってます。講義数が他の2つと比べて少ないですが、創設者のSebastian Thrun氏はGoogleの副社長だったりした人なので、CSに興味のある人は必見です。



夏休みの間暇だったので、上記3つのサイトをすべて使って、なんちゃって留学生をしてました。


授業の質
授業はとてもわかりやすいです。
授業を行っている大学がエリートだからといって授業内容が難しいわけではありません。
むしろ教え方が上手いのですぐに頭に入ってきます。
頭良くないし授業内容を理解できないんじゃないか、と心配する方もいるかもしれませんがそんなことは全くありません。そういった人こそ受講すべきだと思います。

全てを無料にするために教科書を指定しているところは少ないですが、指定されていても無料で閲覧可能(著作権上印刷、保存は出来ない)な場合が多いですし、気前のいいところだとPDFファイルで公開してくれるのでオフラインでも閲覧可能です。高い教科書を無料で使えるというだけで受講する価値があると思います。

Courseraでは講義ビデオの途中で練習問題が入るので、学んだことの理解を深めることが出来ます。
edXではひとつの動画を見終わると次の項目が練習問題になってます。
Udacityでは一つの動画の最後に練習問題があります。



活発なフォーラム
ネットを使ってまで学習しようとする物好き、もとい、勉強熱心な人が多いのでフォーラムは活発です。年齢層も子供から大人まで幅広いです。
世界中に受講者がいるのでわからないことがあって質問してもすぐに誰かが答えてくれます。こっちが夜中でも地球の反対の国は真っ昼間ですから。
講義を担当している先生が回答してくれることはめったにありませんが、どの講義にもTAが常駐しているので、その人たちが回答してくれます。
でも基本は受講者同士での助け合いです。
試しに私も数人に回答しましたが、「わかったよ。ありがとう。」と言ってもらえました。英語圏でない人も多く参加しているおかげか、案外適当な英語でも伝わるもよう。

Meetupというものもあって、これは受講しているもの同士がリアルであって議論や関心のある分野などについて話すといったオフ会です。日本のコミュニティに参加している人数は150くらいなので日本での知名度のなさが伺えます。
私の周りでもMOOCを利用しているのは留学生1人だけで、日本人だと名前すら知らない人ばかりです。言語の壁があるので日本人がコンスタントに使うようになるのはまだまだ時間がかかりそうです。


修了証明書
宿題や試験である一定以上の点数を取ると修了証明書をもらえます。
Udacityの修了証
この授業は高校レベルの物理の授業でした

Courseraの修了証
トロント大学の基礎的なプログラミング

edXの修了証
MITの古典力学


日本の大学との違い
海外の大学の講義と日本の大学の講義を比較すると、重点を置くポイントに違いを感じます。
日本の大学では「何を教えるか?」に重点を置くのに対して、海外の大学では「どう教えるか?」に重点を置いていると感じました。
受講していて常々思いますが、どう教えれば効果的な授業になるのかがよく考えられているなと感じます。「学部レベルで予習なんてしてこないよ」と自慢気に話す日本とは大違いです。



学ぶことの楽しさ
MOOCを使って思ったことは、勉強しているのに勉強しているという感覚がしないということです。
童心に返ります。どういう意味かというと、子供の頃は電車の名前をたくさん覚えたり、虫の名前を覚えたりしたことはないでしょうか?
その頃は勉強しているという感覚はありませんでしたよね。あったのは、知るのが楽しいんだ、という純粋な好奇心や探究心だったのでは?
しかし、小学校、中学校、高校、大学と進むに連れてそんな気持ちはどこへやら。
「宿題めんどくせー」、「こんなんやって将来なんの役に立つんだよ」と思うばかり。

そんないつの間にか忘れてしまっていた好奇心、探究心を蘇らせてくれます。
今後のためにこの知識はあったほうがいいな、と打算的にとった授業でも、いつの間にかその学問の楽しさや奥深さに強く惹かれていきます。
本来、学問とはこうあるべきなのではとしみじみ思います。


既存の大学の意味
無料でここまで充実した授業を受けられるとなると、学問を修めるためにお金を払ってまで大学に行くことの意味を考えさせられます。今までも大学では自分で勉強するものと思っていたので、「授業料 = 図書館利用料 + 実験器具使用料」 と考えていましたがそれさえも割に合わない気がしてきます。
自分の出た大学が20年、30年後にはなくなっていた、なんてことが当たり前の世の中になる日も来るかもしれません。


進路選択の参考に
今時の高校生は明確な目標や、学びたい分野があるから大学へ行く、という理由で大学進学をする子はかなり少数でしょう。大卒じゃないと就職が大変だからや、みんなが行くからといった理由で特に学びたい分野があるわけでもないのに進学する子がほとんどではないでしょうか。
かく言う私もそんな理由で大学に入学しました。専攻する学科も単純に模試で点数が良かったからという理由で化学科にしました。

そんな今はまだ特に学びたいことがない高校生にもMOOCをおすすめしたいです。
Courseraだったら大学で学べる分野のほとんどをカバーしていますから片っ端から受講してみたら自分の興味の湧く分野が見つかるかも。


最後に
こうした授業が公開されたことによって今まで学ぶ意欲はあったが、学ぶ機会がなかった新興国の人々がどんどん伸びていくと思います。
現在では日本の技術を学ぶために新興国から日本に留学しにきますが、この構図が逆転する日がくるかも。
日本の大学生は世界一勉強しないらしいので十分ありえそうです。


現役大学生がMOOCを使ってみて1
MOOCを利用し始めて1年が経過した

参考
勉強しない大学生が、量産されるメカニズム

現役大学生がMOOCを使ってみて1



知名度を増しつつあるが、まだまだマイナーなMOOC。

どのくらいマイナーかというとGoogleで「MOOC 感想」で検索すると、最初の数個はMOOCに関するものだが、それ以降は”MOON”が出てきてしまうくらいにマイナー。

MOOCと打つとスペルチェックで赤の波線が引かれてしまうくらいマイナー。

そんなMOOCの感想を書いている記事はちらほら見かけるが、その多くが社会人やライターによるもので意外にも現役大学生のものが少ない。
そこで現役大学生から見たMOOCについて書いてみる。


そもそもMOOCとは何ぞや?


Massive open online course (MOOC) は、
WEB上で無料で参加可能な大規模講義のことである。
Wikipediaより引用


まぁ「世界中の大学の授業が無料で受けられる」という認識で十分でしょう。
ただ、この世界中の大学というのがなかなかの大物揃いで、ハーバード大学、マサチューセッツ工科大学、スタンフォード大学といった誰もが知っている超エリート校が参加しています。東大の授業も今月の初めから始まりました。

ちなみにハーバード大学の年間の授業料は約38,000ドル、マサチューセッツ工科大学では約42,000ドルらしいです。現在のレートだと¥100/$1くらいですから年間授業料だけで400万円近くするわけです。日本だったら私立の医学部クラスの学費です。国立なら4年行ってもお釣りがきます。

そんな世界トップクラスの大学の授業が無料で受講できるのがMOOCです。
きっと誰もが超エリート校ではどんな授業が為されているんだろう思ったことが一度はあるでしょう。
そんな授業を現在では誰もが無料で受講することができるのです。使わない理由がないですね!


英語の授業で大変じゃないの?
MOOCに参加している大学は英語圏の大学が多いので当たり前ですが授業も英語です。
多くの人が「英語なんて出来ない」ということで受講する前に諦めてしまうかもしれません。

しかし、意外に思われるかもしれませんが英語力は対してなくても大丈夫です。
実際、私の英語力は
・センター試験の英語85%
・TOEIC 555 点
・外人に道を尋ねられた時、何と言ったらいいかわからなかったので" Come with me ! "と答える
くらいのレベルです。
TOEIC 550~が企業が新卒者に求めるスコアらしいので、私の英語力はずば抜けて良い訳ではありません。

英語が流暢でない私でも受講していられる理由は、
1. 英語の字幕がある
2. 授業なので口語であって文語でない
といったところでしょうか。
字幕があるため聞き取れなくても読めれば何とかなり、また口語なので大学入試で出てくるような意味の取りづらいものも出てきません。

ただし、専門用語はやはり難しいです。Weblioを使うと単語のレベルが出るのですが、レベル20超えが平然と出てきます(レベル10で大学院以上の水準、英検1級以上合格に覚えておきたい単語)。
このレベルの単語になってくるとTOIEC 990取っている人だろうが、英検1級取っている人だろうが知らないでしょうから、英語が出来る出来ないなんて関係ないでしょう。
この専門用語も回を重ねるごとに新しく覚えなければいけないものが少なくなっていくので、始め頑張ればなんとかなります。

ちなみに、数学者ガロアが落ちたことで有名なフランスのエコール・ポリテクニークの授業は全てフランス語で字幕もフランス語のみです。さすがフランスですね。


集中力は保つか?
講義ビデオは1~2時間通しであるわけではなく、1つ3~20分くらいのビデオ5〜10個くらいから成り立っています。そのため集中力がなくなってもキリの良い所で休みを入れることが出来ます。見ている途中で集中力が切れても、残り30分もあると続けるのが厳しいですが、残り3分だったら頑張れるのでは?

初めのうちはすべての動画を通しで見るのはなかなか大変でしょう。
字幕があるから聞き取れなくても大丈夫とはいえ、読むというのもなかなか疲れます。

その昔、ニュースで難聴者向けに手話で観光ガイドしてくれるスマホアプリが紹介されていて、文字を読むより手話を見たほうが楽と言っていました。ニュースを見た当時はどっちも目を使っているのだから疲労度に違いはないだろうと思っていましたが、英語字幕で授業を受けてみてその気持が理解出来ました。ものすごい疲れます。


最後まで続けられるか?
一般的にMOOCの修了率は1割以下と言われています。数値だけ見るとなかなか悲惨な結果ですね。

通常の大学なら授業料を払っているわけですから、その分は授業に出ようと思うかもしれませんが、MOOCは無料ですからいつ辞めてもお金がもったいないという感覚にはなりません。時間を無駄にしたと思うことはあるかもしれませんが。

また、いくら海外の有名大学の授業を修了したからといって、修了証明書はもらえますが大学の単位になるわけでもありません。授業によっては$30〜100払って受講して試験もパスすると、大学の単位として認めてもらったり、修了したことを履歴書にかけるものもありますがあくまで海外の話。日本では今月から東大の授業が始まったばかりで今後どうなっていくのかまだわかりません。

そして、なんだかんだ言って英語の授業というのは日本人にとって大変です。
個人的には2週間英語の授業に耐えられるかどうかがMOOCでの成功の鍵ではないかと思います。2週間耐えられれば一気に楽になります。出てくる専門用語も限られてきますし、ネイティブの英語を聞きながら英語字幕を読んでいるせいか、初めは全く聞き取れなかった英語がだんだんと聞き取れるようになってきます。
私はMOOCを利用し始めてまだ1ヶ月くらいですが、最近では字幕を読まなくても理解できるようになってきました。
マシンガントークをする先生のいってることを理解するのは難しいですが、たまに字幕にもUNKNOWNと出るので気にする必要はありません。ネイティブが聞き取れないものをノンネイティブである我々が聞き取れるはずがありません。

最初に取る授業は多少なりとも知識のある分野の授業をおすすめします。シラバスで予備知識なくても大丈夫と書いてあってもそれはネイティブにとっての話。
MOOCを利用し始めた頃、知識を増やすためと思って全く学習したことのない統計学の授業をとってみたのですが、出てくる単語の意味分からず、訳しても意味分からずで挫折しました。
すでに知っている分野でも海外ではこういう風に教えるのかと勉強になりますから受講してみて損はないです。


概要は軽く書いて肝心の授業内容や授業の質、日本の教育との違いを書こうと思っていたのですが、概要だけでものすごく長くなってしまいました。

続く
現役大学生がMOOCを使ってみて2
MOOCを利用し始めて1年が経過した

参考
企業が求めるTOEICスコア一覧
【MOOCs-1/3】一流大学の講義を無料受講できるMOOCsとは

注) 上記だと最近になって講義が公開されるようになった感じがしますが、実際はMITがOCWで2003年から講義ビデオをネット上に公開していたので、講義を公開すること自体は新しいことではありません。OCWとMOOCの違いは、OCWでは実際に大学で使った講義資料や講義ビデオをネット上に公開するだけだったのに対し、MOOCではそれらをさらに勉強しやすいように再編または始めから専用に撮り直して公開、議論するためのフォーラムを設置、宿題や試験を課し、最後には修了証明書を発行してくれることです。(私の認識では。間違っていたらごめんなさい。)